像高 163.4cm

 円成庵(えんじょうあん) 木造六字尊立像(ろくじそんりゅうぞう)

 六字尊は「六字天」とも「六字明王」とも称される密教尊像。その特徴は明王の異名を持ちながら菩薩の姿であらわされるとともに、左脚をもって片足立ちするという稀有な姿にある。平安末期の諸記録によれば、宮廷とくに白河・鳥羽両院の周辺において院とその親族の息災延命を願って、いわゆる院の近親から造像寄進という形態をとって盛んに造像されたことが知られる。しかし、現存する六字尊像は円成庵像が唯一である。本像はかつて香川県坂出市王越町乃生(のう)辺りの地に祀られていたが、永禄年間(1558〜1570)に現在地に遷座されたと伝えられる。ヒノキ材、一木割矧ぎ造り、彩色、彫眼。光背・台座は後補。
 本像は厚く後世の彩色に覆われており、平安後期の仏像彫刻特有の彫りの浅い優美さを窺うことはできず、印象を著しく損ねている。彩色の浮き上がり、剥離・剥落箇所も少なくない。さらに表面には亀裂がいたるところに生じており、ところどころで部材の欠失が認められる。また、像の加重を支える左足と台座の接合部には隙間が生じて安定しておらず、転倒の危険があり、修復の緊急性は極めて高い。


Copyright (C) The Sumitomo Foundation. All Rights Reserved.

前ページに戻る