各本紙 99.4cm×33.0cm
葛蛇玉筆(かつじゃぎょくひつ) 「鯉魚図(りぎょず)」
曹源寺(そうげんじ)は永源寺第4世の霊仲禅英(れいちゅうぜんえい)(永源寺開祖寂室元光の高弟の一人)が開いた寺院で、臨済宗永源寺派の中核をなすものの一つであるが、葛蛇玉による制作や同寺伝来の経緯は不明である。本作品は昭和62年の文化庁による書画調査で発見された。 葛蛇玉は好んで鯉を描き、「鯉翁(りおう)」と呼ばれたことで有名だが、残存する作品数は少なく(6件8点と言われる)、中でも鯉を描いたものは、本作とファインバーグ・コレクション(米国のファインバーグ夫妻が収集した江戸絵画を中心とする日本美術のコレクション)の1幅のみとされる。 作例の少ない葛蛇玉の鯉魚図として注目を集める本作品だが、絵絹と肌裏紙の糊離れが著しいことと、胡粉を中心とした割れ・剥落が多発しており、壁に掛けると破損する危険があるため、展示・公開も困難な状況にある。本図の修復と展示・公開により、遺作報告の少ない本画家の作品がさらに出現することも期待されている。