寛永16年(1639)、徳川3代将軍家光の長女千代姫が、尾張徳川家2代光友に婚嫁する際に携えた婚礼調度類である。
初音・胡蝶蒔絵調度の制作には、幕府お抱えの蒔絵師幸阿弥家10代長重(こうあみけじゅうだいちょうじゅう)(1599〜1651)が、その工房の総力をあげてあたったが、完成に3年もの月日を要したと『幸阿弥家伝書』は伝えている。『源氏物語』から意匠をとり、卓越した技術を用い、あらゆる蒔絵技法を駆使した優品とされる。このように貴重な婚礼調度であるが、経年劣化を免れることはできず、特に漆塗膜の劣化が著しく、早急な修復が必要な状況にある。
今年度の修復対象は、初音蒔絵調度 書棚(はつねまきえちょうどしょだな)(棚囲い・七宝繋(しっぽうつなぎ))、書棚(棚囲い・龍膽(りゅうたん)七宝繋)、旅香具箱(たびこうぐばこ)、及び見台(けんだい)。いずれも読み継がれてきた『源氏物語』初音帖を意匠化した調度類である。4ヵ年計画で修復を行っており、本年度は2年目となる。 |