天野山金剛寺(あまのさんこんごうじ)は、天平年間(729〜749)、聖武天皇の勅願により僧行基(668〜749)が開創し、のち弘法大師が修練したと伝えられる、真言宗御室派大本山である。
星曼荼羅(北斗曼荼羅)は、除災や延命を祈願する密教の修法として、平安時代中期以降に行われるようになった「北斗法」の本尊として懸け用いられた。円形と方形の二種に大別されるが、本図は、三重院からなる方形の星曼荼羅図であり、内院に須弥山の大日金輪・九曜・北斗七星、中院に十二宮、外院に二十八宿を配置する。星曼荼羅の主尊は釈迦金輪とするものが大半であるが、本図は大日金輪を主尊としており、非常に珍しく図像学的にも重視されている。柔和な彩色には平安時代後期の様式を多分に残しており、制作は平安時代末期から鎌倉時代初期とみられている。
現状は損壊著しく懸用もままならない。肌裏から本紙が剥離している箇所が全面にわたっており、本紙の支持力を表具が失っている。これに巻舒に伴う横折によって亀裂が生じ、そこから断片が剥離するという状況にある。また、黴害も広範囲に及んでいる。2ヵ年計画の修復は、本年度で完了する。 |