木造毘沙門天立像(びしゃもんてんりゅうぞう)
本像の来歴は定かではないが、古式な一木造りの技法を用いて、各所に深く立体的な彫刻を見せながらも、力みの少ない表情や動きを控えた動勢から、平安時代後期12世紀にさかのぼる作とみられている。胸甲に特徴的な鬼面を大きくあらわす。両手先以外は、足下の邪鬼を含めて後補がなく、また表面彩色も当初のものを留めている。 しかしながら、永年、持仏堂に客仏として安置されていたこともあって、表面の彩色・漆箔の浮き上がり、右足の割損、足先の虫蝕などが目立ち、また、両肩や背板の矧ぎ目が緩んできた。そのため、展示はおろか、収蔵庫内での移動もままならない状態である。 本像は、院政期の宮廷仏師に比肩する力量のある仏師の手になるものと推定され、同期の美術史上貴重な作例である。さいわい当初部材が多いので、本来の姿に復し、安全な状態にすべく修復を図る。