木造十一面観音菩薩立像(じゅういちめんかんのんぼさつりゅうぞう)
本像は薮内観音堂の本尊で、長谷寺式十一面観音菩薩像の作例といわれ、地方色を有する相馬地方では数少ない鎌倉時代の仏像である。カヤ材、一木造り、彫眼で現状素地をあらわす。源義経の菩提のために、紀伊国よりもたらされたという伝承があるが、当地で造立されたものと考えられている。 仏面、化仏、背面の各蓋板、両肩より先、両体側の天衣遊離部、両手持物、彩色、光背、台座などはいずれも後補で、台座内に延宝8年(1680)の修理銘があり、これらの後補部はこの時のものと考えられている。その他細部に欠損があり、台座の各矧ぎ寄せが弛み、危険な状況にある。 薮内観音堂の所在地は東日本大震災に伴う原子力発電所事故により、20q範囲の警戒区域に指定されたことにより、事故以来5年間立入りが制限されてきた。2016年7月に避難地域から解除されたが薮内に帰還予定の軒数は少なく、薮内組で本像の維持修復事業の費用を負担することは厳しい状況にある。