絹本著色 仏涅槃図(ぶつねはんず)(土佐行広筆(とさゆきひろひつ))
興聖寺(こうしょうじ)所蔵の「仏涅槃図」は、その落款から土佐行広(生没年不詳)の作と判明する。土佐行広は、土佐派の実質的な祖であり、近衛府の判官将監(しょうげん)に任官し、宮廷・幕府を中心に15世紀前半に活躍したことが知られている。 外題修理墨書銘から宝徳3年(1451)頃という制作年代がわかることから、土佐行広最晩年の基準作として美術史上重要な位置を占め、重要美術品に指定されている。室町時代初期やまと絵の重要な遺品ということになる。 しかしながら、外題に記される寛永17年(1640)以来修理が行われた形跡が無く、経年の傷みが激しい。特に、史料的にも重要な外題墨書銘の破損が甚だしく、八双標木から断裂の危険がある。また、本紙に多数の横折が発生しており、絹の断裂も見られる。かつ、顔料層が剥離しやすく、懸緒も切れ、もはや懸用すら不可能な状態となっている。本年度から3ヵ年計画で修理を図る。