絹本著色 地蔵十王図( じぞうじゅうおうず)
本図を所有する宝幢院は、天平2年(730)泰澄大師(たいちょうだいし)(682〜767)が創建したと伝えられ、元々仏地院と名乗ったが、慶長7年(1602)に現在の名称に改められた。 宝幢院の地蔵十王図は全21幅からなり、中核をなす10幅の十王図は、各幅いずれも画面上部に各王を大きく現し、その下に亡者が様々な責め苦を受ける様子を描いている。他の11幅は、画面中に「七年忌」、「十三年忌」と記したものや、地獄道等六道の一場面、奪衣婆(だつえば)や地蔵三尊など、十王信仰に関係の深いテーマ、モチーフを描くものからなる。地蔵十王図としてほぼ類例を見ない21幅が完全に残っていることから、我が国の地蔵信仰を理解する上でも、大変貴重な図像である。 しかしながら、各幅いずれも本紙・表具とも傷みが進行しており、とりわけ画絹の剥落が各部位に及んでいることから、早急な保存修理が必要な状況にある。21幅のうち傷みの激しい2幅 につき先行して修理を行ったが、その過程で他の幅も早期の修復が望ましいと認め、本年度より7ヵ年計画でを修復を図る。