像高 90.1cm           被災時の状況

 木造薬師如来坐像(やくしにょらいざぞう)

 法行寺所蔵で大作町会が管理責任者となっている本像は、像高でほぼ三尺(90.1p)、両手は腹前で禅定印を結ぶ、比較的類例の少ない薬師如来坐像である。ヒノキ材による割矧造で穏やかな表情を浮かべた面部、量感を控え柔らかな肉取りを施す体部、彫りが浅く数を控えた衣文を配し、薄い衣の質感があらわされているさまなどを特徴とする。これらの点は、11世紀に仏師定朝が創り出した定朝様の影響を受けていることをよく示しており、制作は12世紀頃と推定される。像高で三尺を測る本格的な作例で、平安時代後期における全国的流行を受けた佳作として、地域の文化を考える上で極めて重要な存在である。

  しかしながら、2019年10月25日の台風21号により、本像を安置する堂宇の裏山が崩れて堂宇が顚倒し、本像は台座から地面に落下して頭部はぬかるんだ土砂に埋没するに至った。その結果、後頭部に割れが生じ、全身に水をかぶったことから像の各部にカビが発生したため、早期に像内外のクリーニングと燻蒸の必要が認められる。また、点検により像各所の虫損および朽損も確認されたことから、併せて保存修理を行う。


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