多久頭魂神社(たくずだまじんじゃ)所蔵の高麗版一切経は、高麗版の再雕本(さいちょうぼん)一切経の一括遺品である。
朝鮮から対馬への渡来の時期や経緯を示す墨書・識語(しきご)などは残っておらず、詳細は不明であるが、印面の状態は、朝鮮・世祖(せいそ)
4年(1458)に印刷された増上寺本(東京都)等と共通しており、15世紀の印刷である可能性が高いとされる。また、制作当時の大型袋綴冊子装の状態で伝来してきたことから、他本では改装時に失われた朝鮮王朝での校正墨書が数多く残っている。附(つけたり)指定の和版大般若経も15世紀頃の印刷とみられ、日本中世後期の対馬の宗氏当主、宗貞盛・成職(そうさだもり・しげもと)親子の署判が記されている。
本経は、日本のみならず、漢字文化圏に含まれる他国の研究者にとっても第一級の資料とされるが、水損による染み、甚大な虫損による展開困難な固着などによって著しく状態が悪く、早急な修理が望まれている。3ヵ年計画(6ヵ年事業の1期目)で、高麗版一切経3巻2帖1,016冊・附大般若経和版318帖、写本6帖のうち、高麗版一切経2帖142冊、経典目録2冊、附大般若経和版2帖の修復を図
っており、本年度はT期の最終年度となる。 |