京都市伏見区にある総本山醍醐寺の塔頭理性院は、真言宗小野六流の一つである理性院流の本山であり、12世紀に創建された由緒ある寺院である。
現存する客殿は、醍醐寺80代座主である義演准后(ぎえんじゅごう)の残した日記「義演准后日記」(重要文化財)によれば、元和3年(1617)10月5日に立柱されている。
その客殿にある4室のうち西北角の間に「紙本墨画山水図」が残されている。「義演准后日記」の記載や作風から、狩野探幽(1602〜1674)の作と考えられており、狩野派を代表する探幽の若き時代の画風を知るうえで貴重な絵画である。
糊離れや亀裂、虫の食害が進んでおり、早急に修理しなければ壁から剥がれ落ちる危険性が生じていたため、2017年度から3ヵ年計画で修復が開始された。しかし、想定を超える傷みの状況から期間を4ヵ年に変更して修復が進められている。本年度はその最終年度となる(住友財団の助成はこの1年のみ)。 |