眞輪院は、京都府相楽郡南山城村にある真言宗の寺院である。
そこに伝わった両界曼荼羅図は、細く伸びやかな筆線により曼荼羅諸尊の端正かつ温雅な尊容を描き出しており、彩色も暖色系を多用する優美なものである。総じて院政期仏画の特色をよく示すことから、平安時代後期(12世紀)に制作されたと考えられる。
胎蔵界曼荼羅と金剛界曼荼羅を2幅1対で描き、図様は弘法大師請来様とされる現図曼荼羅を基本的に踏襲するが、各幅とも縦横1メートルに満たず、両界ともに各院・各会の区界を、本来なら三重・五重線あるいは唐草文帯であるべきところ、一本の截金線で表すなど、小型化に伴う独自の表現が認められる。密教の根本画像である両界曼荼羅としては小幅の作例であり、息災・増益など個人的功徳を期待する修法の本尊として描かれたと考えられる。
現在、料絹の欠失や顔料の剥落など損傷が著しく、保存箱を欠いていることから今後も損傷が進行する可能性が高い状況にある。2ヵ年計画
の修復は、本年度で完了する。 |