巻十
縦 26.5cm

  高麗版(こうらいばん) 大般若経(だいはんにゃきょう)

 本経は対馬の長松寺(ちょうしょうじ)に伝来する高麗初雕(しょちょう)版系の大般若経である。高麗初雕版は顕宗2年(1011)に開版された勅版一切経で、高宗19年(1232)の蒙古侵攻によって版木が焼失したため、世界的に現存する経典が極めて少ない。2010年度に詳細な調査が終了し、2011年重要文化財に指定された。
 伝来の過程で多くの損傷が発生し、形態も、修理のたびに改装されている。刊行当初巻子装であった本経は、室町時代には開披が容易な折本装に改装され、さらに江戸時代に折り目が替えられている。そのため折り目部分で亀裂が生じ、また後補の表紙が外れ錯簡もおこしている。さらに虫損によるめくれや水損によるカビ・汚損が生じており、一部に開披が困難な経巻がある。江戸時代の収納箱も、経巻の形状に適したものではなく、出し入れの際に新たな折損が生じている。
 昨年度までの前半300帖の修復に続き、本年度から3ヵ年計画で、後半299帖の修復事業を開始する。


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