絹本著色　大鑑禅師像（だいかんぜんじぞう）

　禅宗の六祖、大鑑禅師慧能（638〜713）の半身像である。画面左下の識語は華蔵宗演（1142〜1222）によるもので、慶元4年（1198）とあることからその年の作成と推測される。宗演は南宋初期の著名な道学者張九成（1092〜1159）と親しく、宗演周辺で六祖慧能を顕彰するために制作されたものであると考えられている。
　刺子縫いの衣に袈裟を付け、頭巾を被った老骨の面貌を正面から捉えた姿は、気迫にあふれた非凡な精神を象徴的に表し、本来無一物の境地から頓悟を導いた禅師の禅風をよく伝える作風である。
　現状は、画面下方に絵絹の断裂や剥離が進んでおり、目の詰まった良質の南宋時代の絵絹に対して、補絹はその絹目が対応せず、結果として絹地全体の強度を減退させてしまった状態となっている。今年度から、2ヵ年計画での修復を開始する。