絹本著色 両界曼荼羅図(りょうかいまんだらず)
福盛寺(ふくじょうじ)所蔵の両界曼荼羅図2幅は、現図系統を踏襲したものである。裱背墨書銘から、 「応永11年(1404)2月、法印宥勢の求めに応じ制作」されたことが明らかになっており、この福盛寺本は制作年次の明らかなものとして重要な位置づけにある。 本図は精緻な筆致、重厚な賦彩で描かれた軸装2幅の曼荼羅図であり、天保15年(1844)に再表具されたものの、後世の補筆、補彩がない点でも貴重な作例といえる。 現状は、天保15年の再表具からも160年余が経過し、表装・画面とも、経年による煤、塵、埃等が付着している。また表装に使用した糊や表具裂の酸化に伴う表装の硬化が進行し、画面横折れが生じている。画絹の折れや浮きなどの経年による損傷、彩色の剥落もあ る。昨年開始した2ヵ年計画での修復は、本年が最終年度となる。