椿鳥堆朱食籠　（蟹仙洞）

16.8cm四方　高さ25.0cm

椿鳥堆朱食籠(つばきどりついしゅじきろう)

　山形県上山市にある蟹仙洞（かいせんどう）美術博物館は、日本で唯一の彫漆器展示施設で、主に中国の明から清代作の食籠、盆、箱等多岐にわたる90点あまりの彫漆器が蒐集されている。東日本大震災の際に展示ケース内の6点の漆器が被災し、現在は昭和女子大学光葉博物館に寄託されている。
　これまで、中世彫漆器について文化財学的調査を踏まえた修復例はほとんど無く、今回の彫漆器の構造、材質等の調査と、その結果を加味した修復は得難い機会である。
　昨年度から2ヵ年計画で修復を開始した「椿鳥堆朱食籠」は、甲盛りの蓋と低い高台を有する5段重ねの堆朱食籠で、蓋表には繊細な毛彫り模様を施した二羽の鳥に椿の花枝文を、蓋及び身の側面には段ごとに椿、牡丹、菊、梔子（くちなし）の花枝文で飾り細部まで確かな彫技で彩った品格ある堆朱食籠である。