(本紙 縦300cm  横252cm)

絹本著色仏涅槃(ねはん)

  臨済宗向嶽寺派の大本山塩山向嶽寺の所蔵する本作品は、制作時期が明応9年(1500)より文亀2年(1502)の間であることが記されており、この時期の禅宗絵画の基準作としてとらえることができる。
 山梨県内に伝わる涅槃図の中で最も大幅なもので、精緻な描写と截金(きりがね)や裏彩色(うらざいしき)を用いた丁寧な色彩などに伝統的な優れた技法を用いている。  
 図像的にも、鎌倉後期以降に主流となる頭側からではなく、釈迦の足元からみた古様な構図をとっている一方、会衆や動物の数が多い点や、慟哭の表情の豊かさなどに新しい時代の要素も多くみられ、釈迦の枕元に泣き伏す老女は、願主である可能性もあり、他に類例がなく、鎌倉期に涅槃図の図像が大きく変化する過渡的な作例として貴重である。
 現状画面全体にシミや白カビ痕があるほか、裏彩色や厚く盛った顔料の剥落もみられ、3カ年の予定で画面の汚れ除去、剥落止め等を行う。

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