華形大壇 金剛界

高 32.4cm 幅 168.0cm 奥 168.0cm

華形大壇 胎蔵界

高 33.5cm 幅 168.0cm 奥 168.0cm

両部大壇具りょうぶだいだんぐ2具のうち華形大壇けぎょうだいだん

 室生寺は、役行者(えんのぎょうじゃ)の草創とも伝わる古寺で、平安時代前期の建築物や仏像を今に伝え、女人高野の別名でも知られる真言宗室生寺派の大本山である。

  本品が伝来した室生寺本堂(灌頂堂)は、延慶(えんぎょう)元年(1308)年に建立されたが、本品の連弁装飾にみられる、先端を反り返らせた力強い表現などには鎌倉時代後期の特徴が表れており、おおよそ本堂と同時期に制作されたものと考えられている。大壇は密教の修法の際に設けられる壇のことをいうが、本品は室生寺本堂(灌頂堂)の内陣左右に据えられた2基の大壇で、密教で重視される金剛界・胎蔵界の両部にそれぞれ対応している。このように両部に対応する2基の大壇を揃いで伝える事例はめずらしく、密教美術史上に重要な意義を有する作例として評価されている。

 しかしながら、全体に経年の埃の付着がみられるほか、各所で漆層が剥落し浮き上がりがみられる。胎蔵界の天板中央には亀裂があり、材が動揺している箇所もみられることから、保存状態の改善を図るため修理を行う。


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