本紙 157.0cm×101.7cm

絹本著色 虎図(陶佾(とういつ)筆)1幅

  京都市上京区に所在する浄土宗寺院の報恩寺は、黒田長政終焉の地として知られ、また「鳴虎の報恩寺」と通称されて親しまれている本作は、この通称の由来となる絵画であり、寺院の歴史にとって非常に重要な什物である。本図は、いわゆる水呑みの虎の図様だが、豊臣秀吉が本図を報恩寺から聚楽第に持ち帰った夜に鳴いて眠れなかったという逸話から「鳴虎」と称されるようになった。

 本図の作者である陶佾は、中国・明時代に宮廷に出仕した画家で、史料より弘治年間(1488〜1505)の活動が知られるが、現存作は極めて少ない。本図はまた、中国と朝鮮の虎図の比較や日本画壇への影響などの研究にも寄与することが期待される作例である。 

 現状では、本紙全体に折れが生じ亀裂にまで発展している箇所や本紙が欠失している箇所が随所に見られており、経年の傷みの速やかな解消が求められている。本年度より3ヵ年計画で修復を図る。


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