巻子装 本紙(51紙)
28.4cm×1,699.2cm

華厳十重唯識瑺鑑記(けごんじゅうじゅうゆいしきじょうかんき)巻第一(凝然(ぎょうねん)筆)

  華厳十重唯識瑺鑑記」は華厳宗で説く十重唯識に関する、東大寺の華厳学僧凝然(1240〜1321)の著作三部の一つである。全7巻からなり、本品はその巻第一である。奥書から正応5年(1292)に東大寺戒壇院で撰述されたことがわかる。凝然自筆本であることから草稿本あるいは成立間もない自筆写本と考えられている。凝然が華厳学者たるとともに法相唯識の学に造詣が極めて深いことを遺憾なく示すもので、史料的価値は極めて高い。自筆の僚巻として、現在奈良国立博物館に巻第四が所蔵され、早く重要文化財に指定されていることからも本品の重要性が知られる。

 現状では、虫食いなどによる本紙料紙の欠失、経年による汚れの付着や染みが多く見られ、過去の補修箇所の不具合もあって、複合的な損傷により取扱いが危険な状態にある。本年度より2ヵ年計画で修復を図る。


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