像高  30.1cm

 銅造百津聖観音( ももづしょうかんのんぞう)

  本像は、抑揚の強い目鼻立ちや賑やかな首飾りなど、典型的な明〜清時代の金銅仏の特徴を備える渡来仏である。宝冠に化仏を戴くことから観音菩薩像であると考えられるが、肩にあらわされる水瓶や小鳥のモチーフは、中国や朝鮮半島の水月観音画像に通じるものがある。

 本像は、寛永14年(1637)に創建された百津観音堂に祀られたとされる。戦国時代に当地を領有していた大村氏は、キリスト教に帰依し、領内の寺社をことごとく打ち壊したが、その後17世紀に入ると寺社は次々と復興した。百津観音堂もそのような歴史的経緯のなかで創建されたと推測される。本像は観音堂創建時に遡りうるものであり、キリスト教徒による神仏棄却を経て復興した当地の歴史の一端を物語る貴重な存在である。

 現状、頭部は傷みも少なく、制作当初の面影をよく伝えるが、背面から下半身にかけては鋳造の具合が悪く、脚部のほとんどは後世の木造にかわっている。左膝と裳先の2片は、当初のものが割損した状態で残っているが、本体とは完全に分離していて、今後亡失する可能性が考えられる。今回の修理では、観音像本体と脚部(後補)を緊結して安定させ、転倒の恐れをなくすとともに、別置されている左膝等を脚部に組み込んで一体化することで亡失を未然に防ぐ対応を行う。


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