本紙 165.4cm×56.8cm

絹本著色 観世音菩薩像

  天龍寺は、足利尊氏を開基とし、無窓疎石(むそうそせき 1275〜1351)を開山として、暦応(りゃくおう)2年(1339)に創建された臨済宗の寺院である。

 本作は、中国・元時代、14世紀末頃の制作と考えられる白衣(びゃくえ:僧が着る袈裟や法衣ではなく、在家の着る白い衣のこと)を着した巨大な観世音菩薩像である。本紙のみで160cm、表具を含めると260cmを超える。 

   白衣観音は、中国宋代における居士仏教(こじぶっきょう:在家の仏教信者たちの間で行われる仏教のこと)の進展により制作が盛行したが、元時代以降、主に水墨と白描(はくびょう:墨の線だけで描くこと)の技法による絹本、紙本の画像が制作された。本図は、その中でも著色の巨幅という特色を備えており、他に例が少ない。

 本図は、巨幅であるにもかかわらず、長年細かく巻かれた状態で保存されており、使用の際の巻き解きの繰り返しによって、画面下方に横折れが多数認められ、それは彩色面にも及び、絵具層に亀裂が生じるとともに剥落が進行している。2ヵ年計画 の修復は、本年度で完了する。


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