像高 95.8cm

 木造愛染明王坐像( あいぜんみょうおうざぞう)

  赤岩寺は、神亀3年(726)に行基が開創したと伝わる赤岩山正法院法言寺に起源を持つ高野山真言宗の寺院である。

  本像は、同寺愛染堂の本尊として伝来した、一面三目六臂で開口する獅子冠を戴く通形の愛染明王坐像である。本体および光背は、表面に残る彩色や截金(きりかね)文様、銅製天冠台の造形などから鎌倉時代の作と考えられている。台座は、再興銘札より元禄5年(1692)に後補されたものであることがわかっている。昭和7年(1932)の修理時、獅子冠内に愛染明王小像104躯、愛染明王名号・真言一紙などが発見されており、現在は再納入されている。鎌倉時代の愛染明王彫像として、芸術的・学術的に貴重な価値をもつ仏像といえる。

 前回修理から90年を経過し、像表面の劣化や指・条帛(じょうはく:肩から斜めにかけた帯状の布)の損傷、持物の脱落が見られ、光背にも彩色の剥落、二重円相部輪郭の一部亡失などが目立っている。本体と光背を支える台座との関係にも不安定な状況がみられることから、全面的な修理を行う。


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